制作はA社、広告はB社、SEOはC社

Web施策を外注するとき、領域ごとに得意な会社へ分けて発注するのは、一見すると合理的な選択に見えます。ホームページ制作は制作会社、リスティング広告は広告代理店、SEOはSEO専門会社。それぞれの分野で実績のある会社に任せれば、各領域で最良の結果が得られそうに思えます。

実際、この形で発注している企業は少なくありません。相見積もりを取れば領域ごとに安い会社を選べますし、1社に依存しないぶん、切り替えもしやすくなります。

ただ、この体制には構造的な弱点が1つあります。成果が出なかったときに、誰も原因を特定できないという点です。

成果が出ないときに何が起きるか

広告からの問い合わせが伸び悩んでいるとします。広告代理店に相談すると「クリックは十分に取れているので、着地ページの内容に課題があるのではないか」という回答が返ってきます。そこで制作会社に相談すると「ページは要件どおりに作っている。流入しているユーザーの質に課題があるのではないか」と言われます。

どちらの言い分も、それぞれの立場からは正しいのです。広告代理店はクリック単価とクリック数で評価されており、その指標は達成している。制作会社は要件定義に沿って納品しており、その範囲では責任を果たしている。ただ、「問い合わせが増えない」という一番肝心な問題は、両社の責任範囲のちょうど境界線上に落ちていて、どちらの担当でもないという状態になります。

発注側から見ると、これは非常に扱いにくい状況です。各社の言い分を突き合わせて判断しなければならないのに、判断するための知識は各社のほうが持っている。結果として、どちらの主張が妥当なのかを判断できないまま時間だけが過ぎていきます。

なぜ分業だと原因を特定できなくなるのか

データが分断される

広告の管理画面は代理店が、アクセス解析は制作会社が、検索順位はSEO会社が見ている。それぞれが自社の担当範囲のレポートを出してきますが、「広告で来た人がどのページで離脱し、そのうち何人が問い合わせたか」という横断的な見方は、誰の担当でもありません。集計の粒度も期間の区切り方も会社ごとに違うため、後から突き合わせようとしても手間がかかります。

施策の優先順位を決める人がいない

限られた予算のなかで、広告費を増やすべきか、ページを直すべきか、記事を増やすべきか。この判断には全体を見た比較が要ります。しかし各社は自社の担当領域を伸ばす提案しかしません。広告代理店は広告予算の増額を、SEO会社は記事本数の増加を提案します。どの提案もそれ自体は間違っていませんが、「いま最も費用対効果が高いのはどれか」を横並びで比べる役割が、体制のなかに存在しません

改修のたびに調整コストがかかる

広告のテストで「この訴求のほうが反応が良い」と分かっても、その内容をページに反映するには制作会社への依頼が必要です。依頼して、見積もりを取って、スケジュールを調整して、ようやく反映される。検証の1サイクルが数週間単位になり、試行回数を稼げません。

それでも分けたほうがよい場合

ここまで分業の弱点を挙げましたが、分けたほうがよいケースもあります。

ひとつは、社内に全体を見る担当者がいる場合です。各社を横断して判断できる人が発注側にいるなら、領域ごとに最も強い会社を使い分けたほうが、個々の施策の質は上がります。上で挙げた問題は、要するに「横断して見る役割が誰にもない」ことから生じているので、その役割が社内にあるなら分業は機能します。

もうひとつは、特定領域に高度な専門性が要る場合です。大規模なECサイトの広告運用や、特殊な業界に特化したSEOなど、その領域だけで深い知見が必要な場合は、専門会社の力が必要になります。

逆に言えば、社内に専任のWeb担当者がおらず、施策の規模もまだ大きくない段階では、分業のメリットよりも調整コストのほうが大きくなりやすい、ということです。

一貫して任せる場合に確認しておくこと

では1社にまとめれば解決するかというと、そう単純でもありません。「丸投げ」になると別の問題が起きます。目的や優先順位を共有しないまま任せると、出てきたものが想定と違い、修正のやり取りで時間と費用が膨らみます。社内にノウハウも残りません。

一貫して依頼する場合、次の点は事前に確認しておくことをおすすめします。

  • 制作とマーケティングの担当者が実際に同じか|社内で部署が分かれていて、実態としては社内で分業しているだけ、という場合があります
  • 何を成果指標にするか|アクセス数なのか、問い合わせ件数なのか、受注額なのか。ここを決めずに始めると、評価のたびに議論が振り出しに戻ります
  • 定例で何を報告してもらえるか|施策の実施報告だけでなく、数値の推移と次の打ち手まで出てくるか
  • 自社側で何を持つか|広告アカウントや解析ツールの管理権限は、発注先ではなく自社で保有しておくほうが、後々の選択肢が広がります

当社の場合

当社は、戦略設計・制作・集客/運用・分析改善の4領域を同じ体制で担当しています。制作会社でありながらWebコンサルティングとデジタルマーケティング支援まで行うため、「広告のテスト結果をページに反映する」といった作業が、社外への発注を挟まずに進みます。

実際にご支援した不動産会社様では、ランディングページと広告運用の両方に同時に手を入れ、半年で問い合わせ件数が2倍になりました。どちらか一方だけを担当していたら、この改善は成立していません。

対応範囲と進め方はサービス一覧に、チャネルを組み合わせた集客設計の考え方はデジタルマーケティング支援のページにまとめています。現在すでに複数社に発注していて、体制の見直しを検討されている段階でのご相談も承っています。

よくあるご質問

いま複数社に依頼中ですが、途中から体制を変えられますか。
可能です。ただし、すべてを一度に切り替える必要はありません。まずは全体を見て課題を整理し、優先順位の高い領域から移していくほうが、現在動いている施策を止めずに済みます。既存の発注先との契約期間もありますので、そこを踏まえた進め方をご提案します。
1社にまとめると、特定の会社に依存してしまわないでしょうか。
その懸念はもっともです。対策として、広告アカウントやアクセス解析、ドメインやサーバーの管理権限は発注先ではなく自社で保有しておくことをおすすめします。当社でもこの形をご提案しています。権限さえ自社にあれば、依頼先を変える判断はいつでも取れます。
制作会社がマーケティングまで対応できるものなのでしょうか。
会社によります。確認する方法として、その会社が自社サイトで集客できているか、成果を数値で説明できるか、担当者が制作とマーケの両方を語れるかを見てみてください。制作実績の点数よりも、成果の説明の具体性のほうが判断材料になります。