売上アップに近道は無い

コンサルティングの仕事をしていて、わかったことがあります。それは、ビジネスの成功に近道は無いということです。当たり前のことだと言えば当たり前なのですが、それでも、「簡単に売上がアップする方法は無いか?」とノウハウを探し続けている方がいます。それが、長期的ビジネスの構築に結び付かないということをご説明したいと思います。

簡単な方法はすぐ真似される

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例えば、上の図のように、遠回りの黒い道があったとします。これまでは皆、黒い道を通っていました。それが普通でした。しかし、ある時、あなたが赤い道があることを発見しました。これまで30分かかっていた道のりが、赤い道を通ることで10分に短縮されました。このことにより、他の人を出し抜くことに成功しました。そうすると、他の人が、あなたが何故10分で目的地にたどり着けるのかうらやみ、詮索します。そしてとうとう、あなたの跡を付けて、赤い道があることがばれてしまいました。この赤い道が、どういう属性かによって、あなたのこれまでの優位性が左右されます。

誰でも通れる道か?

もし、道を見つけさえすれば誰でもその道を簡単に通れるのであれば、あなたの優位性は、この時点で無くなります。

複雑な道か?

道は誰でも通れるのだけれど、道の至る所にトラップがあり、その全てを知っていなければ通れないとすれば、あなたの優位性には殆ど影響はありません。ビジネスで言えば、一つ一つは簡単なノウハウだけれど、全てのノウハウの集合体を真似しなければ、効果を享受出来ないという状態です。本質を理解せず、表面的に真似をした第三者がコケるパターンです。

独占的利用権があるか?

赤い道が、あなたの私有地であるとか、既に、その道の地主と独占的使用の契約を結んでいるとかの状態にあれば、あなたの優位性は揺るぎません。これは、ビジネスで言えば、商標権や特許権に該当するでしょう。

 

このように、知りさえすれば誰でも真似が出来る方法は、いつかは誰かに真似されて、売上が徐々に下落していきます。差別化戦略においても同様で、ビジネスの重要な要素ですが、その差別化が簡単に誰でも真似が出来てしまうものであれば、ビジネスが短命に終わってしまうことでしょう。戦略を考える際は、他社が安易に真似出来るものかどうか、十分に検討する必要があります。

ビジネスの規模は、金・才能・努力の差に収斂される

ビジネスにおいて、これと言って特徴の無い商品を売っていたところ、たまたま人気が出て、たまたまメディアに取り上げられ、しかも継続的にメディア露出し、売上がうなぎ登りに上昇し、会社が大きくなるということは非常に希です。ところが、ビジネスをされている方の中には、「ビジネスがうまくいっている人には人の知らないノウハウがあり、そのノウハウを使えば、資金をかけたり努力をしなくても、売上を伸ばすことが可能」だと思っている方が一定数いらっしゃいます。そういうノウハウは無いのですが、仮に万一あったとしても、上記した通りに、単純なノウハウであればアッと言う間に広まり、すぐに陳腐化するノウハウでしょうし、複雑なノウハウは、ノウハウの集合体であるが故に、全てを真似しようとすれば、結局、努力が必要というパラドックスに陥ってしまいます。要するに、座して待っていて、ビジネスが成功することは希なのです。

ビジネスの規模は、かけた資金の量に比例する

上場企業ならまだしも、中小起業で、潤沢に開発や広告宣伝に資金をかけられるところは希でしょう。仮に潤沢に資金があったとすれば、一流のデザイナーを雇い綺麗で魅力的なHPを制作し、一流のクリエイターを雇いクオリティの高いCMを作成しゴールデンタイムにCMをバンバン流せば売上は伸びます。もちろん、商品の質やユーザーの受け皿となる社内体制が整っていなければ、収支は赤になる可能性はありますが。

下の図は、「Line」という検索語のGoogleでの検索件数の推移です。2011年11月よりテレビCMを開始したとのことですが、それを切っ掛けに利用者はうなぎ登りに伸びています。このように、資金をかければ、知名度や売上が伸びていくのは明かでしょう。

Lineの検索件数

また、別の視点からこの命題を述べてみます。同業のA社とB社がいてライバル関係にあった場合、A社がYahoo!に広告を出したとすれば、B社も負けまいとして広告を出稿するでしょう。B社がCM放映を始めたら、A社もB社の上をいこうとCM放映を始めると思います。このように、市場原理として相手方の動きに反応して、ライバルと競争環境を同質化しようという動きが生じます。この動きは、相手がギブアップと言うまで続くため、結局、長期戦になると資本が大きい方が勝つということになってしまうのです。

ビジネスの規模は、経営者の才能に左右される

ある業界に、突然、彗星の如く現れて、あれよあれよという間に勢力図を塗り替える人がいます。ブログを始めれば読者を惹きつけて短期間で人気のブロガーとなり、商品もこれまでの常識を覆すコロンブスの卵的発想をして人を魅了し、業者間交渉でもシビアな条件を納得させて価格優位に立ち、無名にもかかわらず大手とタイアップをして知名度アップと販売経路確立を成し遂げる。こういうビジネスに必要なものを一人で全て持っている人には、残念ながら勝てません。

例えば、ソフトバンクの孫正義氏は、2005年の1月にダイエーから球団を買いましたが、これは、2006年の3月に開始する携帯事業の為の布石だったと言います。ソフトバンクが携帯事業を始めるにしても、他社と比べて知名度が圧倒的に無い。そこで球団を買収することで、日本全国の隅々までソフトバンクの名前を知らしめることにしたのです。天才的な経営者は、一見、本業に関係が無い奇策に見えるが後から見たら筋が通っているというような策を常に出し続けているので、気がついたときには手遅れという場面がままあります。こういう経営者がいる業界でビジネスを展開するのは、実に厄介です。

ビジネスの規模は、努力の量に左右される

「何故、その商品が売れ無いのか?」この問いには、マーケティング施策以前の問題があります。そもそも、そういう商品がある、ということをお客さんが知っているのか?また、その商品をA社が扱っているということを、お客さんが知っているのか?という問題です。当たり前ですが、お客さんが知らない商品や、A社がそういう商品を扱っているということを知らなければ、売れる訳がありません。

では、どのように、その商品やA社を知らせれば良いのでしょうか?真っ先に浮かぶのは、広告宣伝でしょう。資金が潤沢にあれば、CM等を使えば売上が伸びることは前述しましたので、今回は、無いものとして考えましょう。この場合、私が提案するのは以下の3つです。

  • 既に、お客さんがいるところへ提携を持ちかける
  • 発信力がある人に個別に営業をして、商品を紹介してもらえないか、打診をする(上記とニアリーイコール)
  • ブログ等のオウンドメディアで情報発信を続ける

上記したように、資金が無い場合は、地道に営業したり情報発信を続けたりして、商品を知ってもらうしかありません。

また、何故、情報発信を続けることが有効かと言えば、下図のように陸の孤島である商品に、様々な業界と関連づけることによりお客さんの流入経路を作ることが可能だからです。だから、流入経路を増やす為に、ブログ等の記事は多い方が良く、更に、お客さんの信頼を得られるように、濃い内容である必要があります。

陸の孤島

リピーターのサポートは大切

資金・才能・努力の項目では、新規の顧客獲得をする場面を述べてきました。もちろん言うまでも無く、事業の存続を担うのは、リピーターです。リピーターの獲得コストは、新規顧客の獲得コストの5分の1で済むというデータがあります。コスト云々言う以前に、既存のお客さんに満足頂くことが、至上命題です。

メディア露出の功罪

テレビや雑誌、新聞に取り上げられると、知名度アップや売上アップにダイレクトに結び付きます。従って、メディア露出をしたいと考えていらっしゃる方も多いと思います。しかしながら気をつけなければ足をすくわれる場合があります。

メディアに取り上げられるには?

メディアは常に新しい話題を探しています。閲覧者数が増えたり、購買部数が増えるセンセーショナルな話題であればあるほど良いのです。この傾向は、一般の人に於いても同じです。そう言うメディアや人に取り上げてもらう為には、以下の3つの条件のどれかを満たす必要があります。

  • 世間を驚かせる前代未聞の商品やビジネス
  • 話題になっている事柄、流行に乗っかったビジネス
  • 話題になっている事柄、流行の専門家

これらの条件は必要条件であり、十分条件ではありません。メディアや発信力のある人へ情報提供をした(=プレスリリース)、もしくはたまたま、情報を探していたら見つけた等の理由で取り上げられます。

メディア露出の前と後

メディア露出をする前の業界の認知度や、業界に携わっている会社の認知度を下図のように表現したとします。

業界マップ1

この状態の時に、メディアに取り上げられたとします。すると、下図のように変わります。

業界マップ2

このように、業界の認知が広がり、マスメディアに取り上げられたA社の認知度も瞬間的にアップします。そしてメディアは、一度取り上げられたものを他のメディアが取り上げる傾向にあるので、運が良ければその後に2~3社に取り上げられる場合があります。そして、3ヶ月程、問い合わせが増え、売上がアップした状態が続きます。しかし、3ヶ月もすると、メディアや一般人は興味を失い、新しい話題探しへ移ります。急速に上がった売上は、また急速に減少することになります。その後は、下図のように勢力図が変化します。

業界マップ3

この図が示しているのは

  • 少しだけ業界の認知度が増え
  • 少しだけA社の認知度が増え
  • 雨後の竹の子のように、新規参入者が増える

という状態です。

メディア露出によって、パイの取り合いになる

参入障壁が低い業界であればあるほど、メディア露出後、競合が増えます。しかし、取材のオファーや、ニュースに取り上げられている間は、高揚感から、自分の実力であるかのように、また、この売上が未来永劫続くような錯覚に陥ってしまいます。優秀な経営者でも、この錯覚に陥ってしまうのです。この売上をベースに、もしくは甘い見通しの下、生産体制への投資や、新たに人を雇ってしまいます。そして、取材攻勢や一時的なブームが過ぎ去った後に、以前と殆ど変わらない売上になってしまう現実や、競合が増えているに現実に愕然としてしまいます。更には、過剰な先行投資や過剰な在庫に経営が圧迫されてしまうことすらあります。

メディアに取り上げられた場合は、運が良くボーナスが貰えた、位の感覚を持つ必要があります。また、そのボーナスでは、無茶な投資は控え、既存の設備の修繕や、商品開発、ホームページの改善に使うのが賢い使い方でしょう。ただし、メディアに取り上げられたのが、一時的なブームではなく、長期的なトレンドだと判断出来る場合は、この限りではありません。

まとめ

商品開発やビジネス構築をする場合は、他社に容易に追いつかれない優位性を持つ必要があります。戦略を考える際にも、表に見える意図と裏側に隠れた本音を持ち、本音に気づかれてはいけません。気づかれる頃には、他社には追いつけない、販路の確立やブランド・ロイヤルティを構築していることが必要です。

また、資金も知名度も無い状態からビジネスを構築する場合は、積極的な営業をしたり、既に確立されている市場へ商品を関連させて認知を広げる必要があります。その場合は、ブログなどのオウンドメディアをフル活用します。地道な作業を要しますが、他社が面倒で追随してこないのなら勝機はあります。

このように、地道な作業を続けていると、ファンやリピーターが増え、業界の専門家という地位を得られます。そうすると、たまたま、ブームが追い風となった際に、メディアに取り上げられることもあるでしょう。その場合も浮き足立たず、堅実な経営を心がけることが、長期的なビジネスを構築するのです。

 

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